NETROOMで起動中のなりちゃ異界アクノロキアの設定ウィキです。

不死の龍が恋をした話

1.
むかしむかしあるところに、ふろうふしのりゅうがおりました。
このりゅうはけっしてとしをとらず、けっしてしぬことはありません。
このせかいがうまれたときからずっと、としをとらないりゅうはせかいをみまもっておりました。
まだほんのすこしのいきものと、ほんのすこしのくさばなと、ほんのすうにんのにんげんしかいないせかいを、
りゅうはみまもりつづけます。いつしかりゅうのもとにはにんげんたちがあつまり、
りゅうにおそなえものといのりをささげるようになりました。

2.
りゅうはいつのまにか、にんげんたちからかみさまとよばれるようになっていきました。
いつもたいくつそうにせかいをみまもっていたりゅうは、じぶんをかみさまといい、
いのりをささげるひとりのにんげんのしょうじょに、こいをしてしまいました。
「あのにんげんは、いつになったらここにおとずれるのだ?」
りゅうはにんげんがおいのりにくるじかんがまちどおしくなりました。
にんげんたちがじぶんのもとへおいのりにくるたびに、りゅうはしょうじょにくぎづけです。

3.
あるひ、りゅうはいてもたってもいられず、にんげんのおとこにばけてしょうじょのもとへおとずれます。
「あなたはだあれ?」
しょうじょはりゅうがばけたおとこにといかけます。なまえのないりゅうはすこしこまりました。
じぶんがりゅうだといったらしょうじょはにげだしてしまわないだろうか?こわがらせてしまうだろうか?
りゅうはすこしなやんだあと、えがおでしょうじょにこうこたえました。
「ぼくのなまえは、いゔぃるあい。よろしくね、おじょうさん。」

4.
“いゔぃるあい”となのったりゅうはまいにち、にんげんのおとこにばけてしょうじょのもとへおとずれました。
しょうじょがとおいやまにさくはながほしいといえば、りゅうはどんなにとおいばしょでも
こっそりりゅうのすがたにもどってやまをこえ、たにをこえ、そのはなをとってにんげんにばけてしょうじょにわたしました。
しょうじょがきらきらとかがやくほうせきがほしいといえば、ふかいふかいどうくつにもぐって
きらきらとかがやくほうせきをとってきてしょうじょにわたしました。
しょうじょがあたらしいきれいなふくがほしいといえば、りゅうはげっこうちょうからいとをもらい、
あたらしくうつくしいきぬのふくをしょうじょのためにつくりました。

5.
あるひ、しょうじょはすてきなだんなさまがほしいといいました。こっそりとにんげんのふりをして、
まいにちまいにちあいにきてはやさしくしてくれた”いゔぃるあい”となのったりゅうをだんなさまにほしいといいました。
りゅうはよろこびました。しょうじょはりゅうがつんできたはなたばをもち、りゅうがつくったきれいなどれすをきて、
りゅうがとってきたうつくしいほうせきをふうふのあかしにして、しょうじょはりゅうとけっこんしました。
ふたりはまいにちしあわせにくらしました。しょうじょがおとなのおんなのひとになっても、
しわくちゃのおばあちゃんになっても、ふたりはしあわせにくらしていました。それでもりゅうはとしをとりません。
いつしかしょうじょだったおばあちゃんは、りゅうをのこしててんごくへとたびだってしまいました。

6.
りゅうはてんごくにいったしょうじょのたましいが、またうまれかわってこのせかいにくることをちゃんとしっていました。
しょうじょのたましいがうまれかわったとき、りゅうはまたにんげんにばけてあのときとおなじようにあいにいきました。
しょうじょがおとこにうまれかわっていればりゅうはおんなにばけてあいにいきました。
しょうじょがおんなにうまれかわっていればりゅうはおとこにばけてあいにいきました。
うまれかわったおとこが、おんなよりもおとこがすきだといえばおとこにばけてあいにいきました。
うまれかわったおんなが、おとこよりもおんながすきだといえばおんなにばけてあいにいきました。
そして、あのときとおなじようにうまれかわったおとこがしわくちゃのおじいちゃんになって、またてんごくにいっても、
うまれかわったおんながしわくちゃのおばあちゃんになって、またてんごくにいっても、りゅうはとしをとりません。

7.
りゅうはいつもさいごにひとりぼっちになりました。うまれかわったしょうじょにあいにいくたびに、
こころにぽっかりとあいたあなはどんどん、どんどんおおきくなっていきました。
あなはどんどん、どんどんおおきくなって、りゅうのこころをどんどん、どんどんくらくしていきます。
いつのまにかりゅうは、しょうじょのうまれかわりにあいにいかなくなりました。
りゅうはしょうじょのおはかのまえで、まいにちないてくらすようになりました。
「どうしてだ?どうしておまえがしんでからぼくはこんなにこころにあながあいたんだ?」
おはかにといかけても、だれもこたえてはくれません。
「うまれかわったおまえにあっても、うまれかわったおまえをあいしても、こころにあいたあながふさがらない。どうしてだ?」
りゅうはなんどもなんどもへんじもしないおはかにといかけます。
「どうしておまえはどこにもいないんだ?どうしてうまれかわってもおまえにもどらないんだ?」
おはかにといかけつづけるうちに、りゅうはきづきました。さいしょにあいしたしょうじょは、
このせかいのどこにもいないのだと。いちどしんでしまったいのちは、
にどといきかえることはないのだと。うまれかわってしまったたましいは、べつのいきものなのだと。

8.
りゅうのこころのあなのしょうたいもわかりました。しょうじょをうしなったかなしみでした。
もうにどとあえないのだ。もうにどとしょうじょのえがおもみれないのだ。てをにぎることも、だきしめることもできないのだ。
りゅうのめからなみだがあふれます。りゅうははじめてかなしいというきもちをしりました。
はじめてくるしいというきもちをしりました。りゅうははじめていたみをしりました。いたい。いたい。
おまえをうしなったかなしみというものは、くるしみというものはこんなにもいたいものなのか。
どうしておまえはさきにしんでしまったんだ。どうしてぼくはおまえといっしょにしねないのだ。
「このからだがいけないんだ! おまえをおいて いきつづけるこのからだがいけないんだ!」
りゅうはかなしみのあまり、じぶんのからだをばらばらにひきさいて、やつざきにしてしまいました。
やつざきになったりゅうのからだからは、たくさんのあたらしいいのちがうまれ、このせかいへとびだしていきました。
こうして、このほしはたくさんのいきものにかこまれ、つつまれ、いまもいきつづけるせいめいのほしになりました。

おしまい

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